【活用ガイド】

JVNDB-2018-002442

Microsoft Outlook の OLE コンテンツ取得における問題

概要

Microsoft Outlook はリッチテキスト形式 (RTF) のメールを表示する際、リモート・ホスト上の OLE コンテンツをユーザによる操作を介さずに取得してしまいます。その結果、攻撃者によりユーザのパスワードのハッシュ値を含む個人情報が窃取される可能性があります。

Microsoft Outlook は、リッチテキスト形式のメールを表示する際にリモート・ホスト上の OLE コンテンツを自動的に取得します。リモート・ホスト上の OLE コンテンツが SMB/CIFS サーバにホストされている場合、Windows クライアントはシングルサインオン (SSO) を用いて認証を行うため、ユーザの IP アドレスやドメイン名、ユーザ名、ホスト名およびパスワードのハッシュ値が流出する恐れがあります。 ユーザのパスワードが平易な場合、攻撃者はパスワードを短時間で解読することが可能です。
CVSS による深刻度 (CVSS とは?)

CVSS v3 による深刻度
基本値: 5.8 (警告) [JPCERT/CC値]
  • 攻撃元区分: ネットワーク
  • 攻撃条件の複雑さ: 低
  • 攻撃に必要な特権レベル: 不要
  • 利用者の関与: 不要
  • 影響の想定範囲: 変更あり
  • 機密性への影響(C): 低
  • 完全性への影響(I): なし
  • 可用性への影響(A): なし
CVSS v2 による深刻度
基本値: 5.0 (警告) [JPCERT/CC値]
  • 攻撃元区分: ネットワーク
  • 攻撃条件の複雑さ: 低
  • 攻撃前の認証要否: 不要
  • 機密性への影響(C): 部分的
  • 完全性への影響(I): なし
  • 可用性への影響(A): なし
影響を受けるシステム


マイクロソフト
  • Microsoft Outlook

想定される影響

遠隔の攻撃者により Microsoft Outlook 上でリッチテキストメッセージを閲覧させられることで、ユーザの IP アドレスやドメイン名、ユーザ名、ホスト名およびパスワードのハッシュ値が取得される可能性があります。取得されたハッシュ値に対してはオフライン攻撃が可能です。また、本脆弱性は、他の脆弱性との組み合わせにより想定される影響が異なります。例えば JVNVU#95841181 と併用された場合、攻撃者は特別に細工したメールを Microsoft Outlook で閲覧させることで、Windows システム上でブルースクリーン (BSOD) を発生させることが可能になります。
対策

[アップデートする]
本脆弱性は、Microsoft update for CVE-2018-0950 で修正されています。このアップデートでは、リッチテキストメッセージを閲覧した際に Outlook が自動で SMB コネクションを開始しないよう対処されています。なお、このパッチの適用後も他のユーザ操作を要する機能は動作します。例えば、メールが "\\attacker\foo" のような UNC リンクを含む場合、Outlook はこの文字列を自動でハイパーリンク化します。ユーザがそのようなリンクをクリックした場合、本脆弱性で想定される影響が再現します。よって、次のワークアラウンドを実施することを推奨します。

[インバウンドおよびアウトバウンドのSMB コネクションをブロックする]
TCP ポート番号 445, 137, 139 および UDP ポート番号 137, 139 を閉じることで可能です。

[NTLM シングルサインオン (SSO) 認証を無効にする]
Microsoft Security Advisory ADV170014 で明記されている通り、NTLM シングルサインオン (SSO) 認証を無効にしてください。
Windows 10 および Windows Server 2016 以降では、レジストリ値 "EnterpriseAccountSSO" が 0 に設定された場合、不特定の外部ネットワークリソースによる SSO 認証が無効化されます。
このレジストリ値を変更しても、SMB リソースへのアクセスは許可されます。ただし、不特定の外部ネットワーク上の SMB リソースに対しては、直近にログインしたユーザのパスワードをそのまま利用せず、ユーザに対して改めて認証情報の入力を要求します。

[複雑なパスワードを設定する]
クライアントが攻撃者のサーバとの SMB コネクションを確立してしまうことを想定し、Windows のログインパスワードは容易に解読されないように、以下の2点を参考にし十分複雑なものを設定してください。

* パスワードマネージャを活用し複雑でランダム性の高いパスワードを生成する

使用するコンピュータリソース間でパスワードの一意性を確保しつつ、十分複雑でランダム性の高いパスワードの生成に役立ちます。

* パスワードの代わりに、大文字 / 小文字、数字や記号を織り交ぜた長いパスフレーズを使用する

保存や入力に別途ソフトウェアを用意せずとも覚えやすく、堅牢な認証情報になります。
ベンダ情報

マイクロソフト
CWEによる脆弱性タイプ一覧  CWEとは?

共通脆弱性識別子(CVE)  CVEとは?

  1. CVE-2018-0950
参考情報

  1. JVN : JVNVU#95312708
  2. National Vulnerability Database (NVD) : CVE-2018-0950
  3. CERT/CC blog : Automatically Stealing Password Hashes with Microsoft Outlook and OLE
  4. US-CERT Vulnerability Note : VU#974272
  5. 関連文書 : ADV170014 | Optional Windows NTLM SSO authentication changes
更新履歴

  • [2018年04月12日]
      掲載
  • [2018年08月22日]
      参考情報:National Vulnerability Database (NVD) (CVE-2018-0950) を追加